『刑事コロンボ』吹替え演出の左近允洋氏、逝く『刑事コロンボ』の吹替え演出を担当(78作)された音響ディレクターの
左近允洋(さこんじょう・ひろし)さんが10日、偽膜性腸炎で逝去されたそうです。76歳でした。
舞台演出の道を志したが仕事に恵まれず、音響演出に携わるようになり、TVアニメの代表作は『あしたのジョー』。また、『バークにまかせろ!』『鬼警部アイアンサイド』など、数多くの外国TVドラマ吹替を演出。妻はテレビアニメ「サザエさん」の磯野フネ役で知られる声優麻生美代子(本名左近允美代)さんです。
『刑事コロンボ』では翻訳家・額田やえ子氏(故人)の台本に手を加え、「日本語のドラマとして成立するように工夫を凝らした」といいます。
「特に苦労したのが最後の決め台詞だというから驚かされる。」
(『刑事コロンボ完全捜査記録』宝島社 「日本語版の職人コンビ・演出家 左近允 洋」)
現在、定期刊行中の
デアゴスティーニ『刑事コロンボDVDコレクション』で毎号、町田暁雄氏が監修されている冊子の中の
「おもしろ翻訳講座」。
あるシーンの同じ台詞の、オリジナル英語版と日本語字幕版、そして日本語吹替え版を比較するコーナーです。よくある"思いつきのトリビア企画"などではなく、今回まさに
左近允さん、額田さんたちの「知られざる死闘」を世に遺すための、重要な研究だと再認識しました。
つい先日の広川太一郎さんと言い、ひとつの時代の転換期なのかも知れませんが、つづく訃報にいたたまれぬ思いです。「吹替え」という一つの文化が、本当の意味で継承されていくことを願ってやみません。
19日、90歳でSF作家アーサー・C・クラーク氏も逝かれました。
心から、ご冥福をお祈りします。