地下鉄の笑劇(ファルス)

~「めとLOG」というタイトルの由来。~
皆様、こんにちは。
めとろんです。
めとLOG《ミステリー映画の世界》は、この2月15日で開設16年となります。
いつも、足繫く訪問して頂き、大変にありがとうございます。
さてさて、この16年、このブログの「めとLOG」というタイトルに言及したことが無いことに今さらながら気づき、この機会に記しておこうと思います。
今や、『メトログ』なんて地下鉄沿線のスポットを紹介するTV番組も存在するようになり、人口に膾炙した感もある、このタイトル。
「めとろん」というハンドル・ネームも含めて、ロック・バンド「メトロファルス」に由来しているのであった。

メトロファルスは伊藤ヨタロウ氏を中心に、1981年結成。「東京一のカルト・バンド」と謳われたバンド。前期は、初期ジェネシス的なシアトリカルかつ中性的、加えて江戸情緒的ヴォーカルと重戦車の如きリズム隊が奏でる、変幻自在な音楽性を有する。ファースト20cmEPのジャケットを、かの大友克洋氏が手掛けたことでも有名。
リーダーである伊藤ヨタロウ氏は、現在、演劇畑での活躍が華々しい。シアターコクーンの松尾スズキ作・演出『キレイ~神様と待ち合わせした女~』(2000年初演)に出演、音楽を担当したことでも知られる。
初めての出会いは、高校卒業直後、東京に出てきて間もなく。もう35年ほど前になる。
METROFARCE official Home Page "Web Web Web-foot!?"
魅力的な要素は限りないが、やはり伊藤ヨタロウ氏の紡ぐ詩の世界に惹きこまれた。最も印象深い曲を幾つか並べてみる。

アルバム『STANDS』所収の「AKTIS(海泡石の寝台)」
「夢のまた夢 目醒めれば また夢
君も街も月も星も 消えてく」
アルバム『GAIA』所収の「真昼の幻日(パレリオス)」
「星の林 月の舟 浮かべて も一度 空の彼方、波の間にまばゆくひろがる
ホラ たえなる調べ聴け 眼をさます記憶
たえなる調べ聴け」
アルバム『PiPi Zazou』所収の「MISTRAL」
「とりとめのない会話 戯れに恋もする 夜明けのペリエもたまに飲む
おまえのことをもう忘れたわけぢゃない
とりとめのない会話… 戯れに恋もする…」
アルバム『STANDS』所収の「僕のジャイロスコオプ」
「あふれ出す水と 光のタペストリー 僕が死んだなら きらめく河に
流してくれ 海に向って 幾つもの橋たち くぐり抜けてゆく」
「Long time gone 僕は騎士(ナイト)
How high the moon 草のベッドで
僕は Gyroscope 廻る 廻る 幻燈機に 君は溶ける」

私が、渋谷のライヴハウスEgg-manに足繁く通ったのは、第二期メトロファルス…ドラムスが、岩瀬雅彦氏から三原重夫氏に交代した頃であり、やはりその頃のサウンドに最も愛着がある。
1990年4/8~9、渋谷Egg-manにおける、オリジナルメンバーであるベーシスト、バカボン鈴木脱退2daysは両日行ったが、その悲痛な気持ちは今でも忘れられない。
その後、バンドは横川タダヒコ氏を迎え、また新たに豊潤な音楽性を獲得、『LINBO島』(’96)はそのひとつの到達点とも言うべき名盤である。

彼らのバンド名「メトロファルス」=「地下鉄の笑劇」の持つ、アンダーグラウンドな妖しさと、ポップで庶民的な親しみ易さ。
そこに憧れ、いわば「我がアンダーグラウンド渉猟日記」のような感覚で、「めとLOG」と名付けたのであった。
今、振り返ってみれば、そこまで「アングラ」ではないけれど。(笑)

伊藤ヨタロウ氏が、ソロ・アルバムで引いたボリス・ヴィアンの言葉を置いてみる。
「人はどのみちいつでも変装しているようなもの。
だから本当に変装してしまえば、かえって変装していないことになる」
これからも、地下鉄の闇に時折、浮かび上がる戯れの劇のように、ひっそりと続けていきたいと思っています。何卒、ご愛顧のほどを。
それでは、また。
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