ENTER LIEUTENANT FUKUIE 福家警部補の挨拶(2014)《 Revised Edition 》 ソフト化熱望! ~倒叙ミステリ・ドラマの新たな地平を拓いた、傑作TVシリーズ~

ENTER LIEUTENANT FUKUIE
福家警部補の挨拶(2014)

《 Revised Edition 》

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ソフト化熱望!
~倒叙ミステリ・ドラマの
 新たな地平を拓いた、傑作TVシリーズ~



 皆さま、こんにちは。
 めとろんです。

 今回は、大倉崇裕氏原作の傑作倒叙ミステリ小説を、果敢に映像化した『福家警部補の挨拶』(2014)をご紹介します。




【 Introduction 】

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 大倉崇裕氏の原作によるTVシリーズ『福家警部補の挨拶』は、2014年1月14日~3月25日まで、全11話で、フジテレビ系列にて放映された。

 原作は、過去にノヴェライズ小説も手がけたほどの、熱烈な『刑事コロンボ』ファンである大倉氏と、同作の卓越した研究家であるライター、町田暁雄氏とのタッグによる、倒叙ミステリ・シリーズである。

 『刑事コロンボ』的な、倒叙推理の短編をやりたいと考えていた大倉氏から、「倒叙のプロットやトリックや手がかりを考えてストックしている」という町田氏に声を掛け、2005年『ミステリーズ!』(東京創元社)掲載の「本を愛した女」から、シリーズがスタート。 
 現在も継続中の、傑作シリーズであり、2014年、このシリーズの一冊目の短編集タイトル『福家警部補の挨拶』を冠したTVシリーズとして、満を持してドラマ化されたのが本作品である。(『刑事コロンボ読本』(洋泉社)「福家警部補シリーズ対談 大倉崇裕&町田暁雄」より)

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 この、『刑事コロンボ』『古畑任三郎』を踏襲した「倒叙形式」であり、高評価の小説を原作とした本格ミステリ・ドラマを、プライム・タイムの連続ドラマとして放送することは、ファンとしても驚きであった。当時、一般的な視聴者層をターゲットとする時間帯で、どう機能し得るか、またどう脚色されるのか、という興味も含めて、一部にひじょうな関心を以って期待されたドラマであった。

 そして、結果として、リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク『刑事コロンボ』とも、三谷幸喜『古畑任三郎』とも異なる、「動機を伏せ札にすることが多く、犯人への感情移入を容易にさせない客観性」「リアルな警察小説と倒叙ミステリ小説の融合を試みた」点など、注目に値する新機軸を幾つも生みだし、同ジャンルの新たな地平を広げたのは間違いない。

 全てが成功したとは言い難いにせよ、その日本においては先駆的な、ジェンダー的な視点なども含めて、野心的で挑戦的なTVシリーズであったと、今こそ高く評価したいのである。


Staff 】

 本作品の企画は、『家族ゲーム』(2013)等の水野綾子氏、プロデューサーは、その後、大倉崇裕氏原作の『警視庁いきもの係』(2017)も手掛ける貸川総子氏。

 演出は、『家族ゲーム』(2013)でも組んだ佐藤祐市氏と岩田和行氏。
 メインの佐藤氏は、『古畑任三郎』第3シーズン(’99)にて3エピソードの演出を担当。
 その後、誉田哲也氏の原作を映像化した『ストロベリーナイト』(2010年~2013年)では、その猟奇的な異常心理犯罪と、警察組織内部の暗闘を生々しく且つスタイリッシュに描くダークな世界観で、評価を高めた。特に、第一話「シンメトリー」や第二・三話「右では殴らない」も含めたTVシリーズ版は、映像による本格ミステリとしても、稀に見る傑作と言えよう。
 さらに、『福家』の前年における、嵐の櫻井翔氏が主演を務めた『家族ゲーム』は、"残酷な家庭崩壊劇"を辛辣に描き、ある種「ミヒャエル・ハネケ的」とも言える傑作であった。
 その他、映画『キサラギ』(2007)も手がけるなど、現在も快進撃を続ける、映像ミステリの名手である。
 佐藤氏の持つ、対象を冷たく突き放すような登場人物たちへのスタンスと、清濁併せ持った赤裸々な人間性に迫るフラットな感覚が、本シリーズの唯一無二な個性に、多少なりとも反映されているように思われる。

 脚本を手掛けるのは、正岡謙一郎氏(1、2、6話)、麻倉圭司氏(3話~最終話)、丸茂周氏(9話)《共同脚本を含む》。
 ほぼメインと言える、麻倉圭司氏も『水球ヤンキース』(2014)に参加されて以降、作品が確認できない。率直に言って、TVドラマ版『福家警部補の挨拶』は、シリーズ構成的に少々破綻があり、そこは複数の脚本家による、齟齬があった可能性も推察されるのである。

 音楽は、横山克氏。NHKで、『100分de名著』(2011~)や、『ファミリーヒストリー』(2012~)等のテーマ曲を担当したことでも有名。音楽担当したドラマ・映画は数多いが、特に、演出・塚原あゆ子氏が関わった、『夜行観覧車』(2013)、『Nのために』『福家警部補の挨拶』と同年2014)、『リバース』(2017)、『最愛』(2021)が印象深い。(と、いうか大好きです!)
 本シリーズでは、弦楽器を大胆にフィーチャーした楽曲が、福家の秘めたる、烈しい内面を象徴しているようであり、流麗なOP曲と併せて、絶妙のコラボレーションであった。


【 Regular Cast 】


福家 警部補 役

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 '92年宝塚歌劇団に入団し、月組、星組主演娘役として活躍。2005年、退団後、女優として活躍。
 主な作品:映画『武士の一分』(2006)、舞台『細雪』(2008)、ドラマ『造花の蜜』(2011、原作・連城三紀彦)、『大河ドラマ 平清盛』(2012)、映画『累-かさね-』(2018)ほか

時生
二岡 友成 役

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 '89年、俳優・柄本明角替和枝の次男として生まれる。2003年、俳優としてデビュー。
 主な作品:映画『超高速!参勤交代』(2014)、『超高速!参勤交代 リターンズ』(2016)、ドラマ『連続テレビ小説 おひさま』(2011)、『アリバイ崩し承ります』(2020)、『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(2021)ほか

稲垣
石松 和夫 警部 役

 '88年~2016年、スーパー・アイドル・グループSMAPの一員として活躍。
 その後も、俳優として、精力的に映画や舞台に出演。
 主な作品:映画『笑いの大学』(2004)、『十三人の刺客』(2010)、『半世界』(2019)、『ばるぼら』(2020)、ドラマ『連続テレビ小説 青春家族』(2014)、土曜ワイド劇場『明智小五郎』シリーズ(’98~2000)、フジテレビの金田一耕助シリーズ(2004~2009)、『連続テレビ小説 スカーレット』(2020)、舞台『サンソン -ルイ16世の首を刎ねた男』(2021)ほか

本 賢
田所 勉 役

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 「ザ・ハンダーズ」「アパッチけん」の芸名で親しまれ、その後、俳優に転身。
主な作品:『幸せの黄色いハンカチ』('82、連続ドラマ版)、『いとしのラハイナ』(’83)、釣りバカ日誌シリーズ(’88-2009)、『下町ロケット』(2015、2018)ほか



《 各エソード解説 》



【 第1話 】失われた
(脚本:正岡謙一郎 演出:佐藤祐市)
1月14日(火)21:00~22:09(15分拡大)放送
原作:『福家警部補の再訪』(創元推理文庫)所収「失われた灯」

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《犯人》藤堂昌也 役

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反町隆史…主な出演:『竜馬におまかせ!』(’96)、『GTO』(’98)、『相棒』(2015~2022予定)ほか

出演…有薗芳記、小林且弥、水崎綾女、島ひろ子、唐沢民賢、松原正隆、岡雅史、平家秀樹、伊藤慶徳、阿久津尚子ほか

《イントロダクション》

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 「1932年3月、大西洋無着陸単独横断飛行を成し遂げたアメリカの英雄リンドバーグの息子が誘拐された。
 事件発生から10週間に渡って捜索と身代金交渉が行われたが、金は奪われたうえに息子も遺体で発見された。捜査の結果、警察はドイツ系移民B.R.ハウプトマンを逮捕。彼には事件当日のアリバイがあった。が、なぜか裁判前にその証拠は紛失。その後、死刑判決が下される。事件は幕を閉じる。だが、そこには未だ多くの謎が残っていた。
 例えばそれは、リンドバーグ本人が起こした狂言誘拐だったのではないか、と…。」


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STORY
 人気脚本家・藤堂昌也(反町隆史)は、俳優志望のストーカー、三室勘司(小林且弥)を別荘に呼び出し、新しいドラマの脚本と称して演技をさせ、誘拐犯に仕立て上げる。三室を撃ち殺し、警察に救出される筋書きは、すべて彼が企んだものだった。
 そして、その目的は、実はアリバイ工作であった。ある原稿で、藤堂を脅迫する骨董商・辻伸彦(有薗芳記)を亡きものにし、その棲み処に火をつける彼は、公式には誘拐犯に監禁されていることになっていたのである。
 警視庁捜査1課強行犯第13係、福家警部補(檀れい)は、上司の石松(稲垣吾郎)から放火殺人の捜査を命じられた…。

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MEMO
 記念すべき、シリーズ開幕のエピソードには、派手な偽装誘拐劇である、原作「失われた灯」(『福家警部補の再訪』所収)が選ばれた。
 『刑事コロンボ』「死者の身代金」的な偽装誘拐が、別の殺人のアリバイ工作になっているという、2件の殺人計画が同時進行する凝ったプロットであり、初回のみ15分拡大スペシャルだったとは言え、2時間枠で製作してほしいほどの、ヴォリュームの原作であった。
 原作における序盤の、福家が藤堂に行き着く過程(辻の電話記録→毎日電話しているバー→バーに残されたメモ用紙「藤堂自宅 夜十時」)も尺の関係かカットされ、辻宅の焼け跡から発見された、藤堂のサイン入り脚本…と、シンプルなものに変更されている。

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 大倉氏&町田氏コンビ曰く「小ネタの連打」と言われる、多くの秀逸な「手がかり」こそ、このシリーズの白眉であるので、致し方ないとは言え、やはり「勿体ない」と嘆いてしまうのである。(笑)
 福家と藤堂が初めて顔を合わせるシーンでの、ノートパソコンの充電に関しての応酬も、原作にある、誠に秀逸な「手がかり」であった。
 原作に倣って、事件の記者会見の直前、福家と藤堂の最終対決が描かれる。

※福家の最後のひと言「世の中に完璧なんかありません。
 だから、人は人を殺すんです」


 福家警部補が、毎回のラストに発する断罪のひと言。
 『刑事コロンボ』「別れのワイン」に代表される、犯人への尊敬と共感を、断じて否定する、ドラマ版における作者たちの、意志表明ともとれるのである。このシリーズはこの後も、幾つかの例外を除き、高みから見下し斬り捨てるような、彼女の立ち位置を堅持していく。
 また、福家に関して、あえて背景を一切描かず、感情移入しにくい人物に設定しているように思われる。
 原作では、『刑事コロンボ』と同じく、彼女の内面描写を一切排し、「他者からの視点」によってその人物像をスケッチとして描きだす手法が取られていて、それに拠ったとも考えられるのである。
 一概に、主人公が感情移入し易ければ良いかと言えばそうではなくて、例えばケネス・モア主演『ブラウン神父』TVシリーズ('74)など、他視点だからこそ成立する、ボンヤリとしたキャラクターを、まるで寅さんのように感情豊かな人物として描いた為に、平凡な"フツーの人物"となり、その魅力は雲散霧消してしまった。
 この初回で表明された、福家の曖昧模糊とした描き方は、企画段階や、俳優の役作りなどに必要であろう明確さを、鉄の意志で手放す大英断であった。
 なお、福家警部補のマフラーが、『刑事コロンボ/秒読みの殺人』の首コルセットへのオマージュではないかと密かに思っている。

 また、原作では、そこまでヘタレなキャラクターではない二岡友成君、柄本時生氏の個性に引っ張られ、どんどん福家の従僕と化していく…。
 これは、彼の悲劇の始まりのドラマでもある。

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【 第2話 】禁断の筋書(プロット)
(脚本:正岡謙一郎 演出:佐藤祐市)
1月21日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の報告』(創元推理文庫)所収「禁断の筋書(プロット)」

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《犯人》河出みどり 役

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富田靖子…主な出演:『アイコ16歳』(’83)、『さびしんぼう』(’85)、『BU・SU』(’87)、『鈴木先生』(2011)、『一の悲劇』(2016)、『逃げるは恥だが役に立つ』(2016)ほか

出演…渡辺真起子、銀紛蝶、石井智也、橋沢進一、佐藤みゆき、中津真莉子ほか

《イントロダクション》

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 「1558年、イングランドでエリザベス一世が即位した。同じ頃、スコットランドには、メアリー・スチュアートという女王がいた。
 エリザベスは聡明で、政治的な能力に溢れる才女だったが、容姿には恵まれなかった。
 比べてメアリーは、美貌と華やかさでヨーロッパじゅうにその名を知られていた。生涯に何人もの男性と結婚し、奔放な愛に生きたメアリーは、貴族の叛乱にあってイングランドに亡命する。エリザベスは、メアリーに殺人の疑いをかけ、19年間、幽閉。
 1587年、メアリーを処刑した。」


STORY
 漫画家・河出みどり(富田靖子)は、パーティーの帰り道、ある編集者から、三浦真理子(渡辺真起子)が、少女漫画雑誌『ルル』のリニューアル後の、作品のラインナップを勝手に変えると耳にして、彼女の部屋に赴く。みどりの新連載作品を「古い」と斬り捨て、「漫画辞めたら」と断じた真理子を、思わず文鎮で殴り殺してしまう。
 みどりは死体を浴室に運び、事故で死んだように見せかけるのであった…。

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MEMO
 漫画家・河出みどり役の、富田靖子氏の神経症的な、繊細な演技が秀逸。
 これは、傑作と言ってよいであろう。
 みどりとの複雑な因縁を持ち、ラストには全てを持っていくと言って過言ではない、三浦真理子を演じる渡辺真起子氏も、冒頭にいきなり殺害されてしまい出番が少ないにも関わらず、さすがの憎々しさと、存在感を体現。そして、ヴェテラン少女漫画家を演じる銀粉蝶氏の、犯人を見つめる哀切極まりない視線が深みを湛えて、思わず、胸を抉られる。
 彼女たちの演技によって、その心理の動きに、鋭さと説得力が生まれているのである。
 そして、福家と河出みどりは、本シリーズ初の、女性犯人との対決となった。

 僕が、このシリーズで出色と考えるのは、この「女性対女性」におけるヴァリエーションの多彩さと、その異様な迫力である。

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 決定的な証拠は、『刑事コロンボ/溶ける糸』へのオマージュであろう。
 (ただし、『刑事コロンボ』への敬慕の表明を厭わないこのシリーズにおいては、同作品の、幾つものエピソードからの引用の混在など、日常茶飯事であることを、あらかじめご了解願いたい。)
 ラストに判明する、人間ドラマとしての皮肉な結末は同時に、「動機そのものが崩壊する」本格ミステリの醍醐味でもあったのである。

 ※福家の最後のひと言「憎しみに、囚われていたのは、あなたです」

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 さて、福家警部補の、ここ一番の仁王立ちを見て、私は『伝説巨神イデオン』('80-81)における、バッフ・クラン重機動メカを連想する。まさに…存在が、アディゴ的だと思えるのである。
 そして、二岡はギラン・ドウであろうか。あくまで私の個人的なイメージでいうと、『太陽の牙ダグラム』('83)的には、福家は(Xネブラ対応型でない)アビテートT10B ブロックヘッドなのである。
 (意味不明な方は、ぜひググってみることをお勧めする。(笑))
 夏仕様の福家警部補は、どんなファッションなのか、興味深い。あのコートあっての重機動メカなのであるからして。

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【 第3話 】プロジェクトブルー
(脚本:麻倉圭司 演出:岩田和行)
1月28日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の再訪』(創元推理文庫)所収「プロジェクトブルー」

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《犯人》新井信宏 役

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北村有起哉…主な出演:『太陽の蓋』(2016)、『オーバー・フェンス』(2016)、『ちかえもん』(2016)、『アンナチュラル』(2018)、『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』(2021)ほか

出演…片桐仁、中山祐一朗、小林顕作、福本伸一、諫山幸治、野村啓介、落合孝裕ほか

《イントロダクション》

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 「1945年、オランダの画家ハン・ファン・メーヘレンは、国家的財産であったフェルメールの絵画数点を、ナチス・ドイツの高官に密かに売り渡した罪で逮捕・起訴された。
 裁判において、国を売った裏切り者と糾弾されたメーヘレンは、自身が贋作家であることを明かし、その絵画はすべて、自分が描いたものであると告白。実際に法廷でフェルメール風の絵を即興で描き、それを証明してみせた。
 メーヘレンは言う。
 私は劣った画家の贋作は描かない、と。」


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STORY
 フィギュア造形家であり、社長の新井信宏(北村有起哉)は、大手玩具メーカーとの取引のさ中、危機に陥っていた。十数年前、その高度な造形力で、高額な『ミリバール』の複製品を贋作し、売り捌いた過去を、造形家・西村浩(片桐仁)に嗅ぎつけられ、強請られていたのだ。西村の工場に出向いた新井は、ついに西村を撲殺する。しかし、そこに塗料会社の小寺(中山祐一朗)が新しい塗料のサンプルを持ち現れたことで、事件は迷走することになる。

MEMO
 このエピソードは、やはり犯人役である、北村有起哉氏の演技が出色である。
 フィギュア造形家が犯人という、これこそ現代の日本でなければ、なかなか実現しない異色の設定。大手メーカーとのフィギュア制作過程や、贋作の問題など、その職業に興味を注ぎつつ、事件の推移を追う楽しさは比類がない。

 棚の汚れとミリバールの綺麗さの矛盾、高価値のミリバールを凶器にした不審…今回も、詰め手の数は綺羅星の如く散りばめられ、西村の工場での福家と新井のやり取りも楽しい。
 『刑事コロンボ』へのオマージュという点では、やはり「ワイン」への偏愛ゆえに犯行に至り、プロ中のプロであるゆえに「ある事実」を自ら証明してしまう『別れのワイン』を連想するが、そこからのオーラス部分は、「フィギュア愛」ともいうべき感情への肯定感で溢れており、それは原作者の嗜好から生みだされた、皮肉極まりない結末なのである。

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 現在、誰かから、このTVシリーズで1番好みなエピソードはどれかと問われたら、第3話「プロジェクトブルー」と答えるであろう。
 なぜなら、他のエピソードは結末が福家の激しい断罪か、拒絶(歩み寄ってか、寄られてかの違いはあれ)でブツ切れるのだが、このエピソードは何故か、哀しみを湛え犯罪者を見つめている、哀切漂う、本シリーズでは異色の結末だからである。

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 ※福家の最後のひと言「愛です」

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【 第4話 】の雫
(脚本:麻倉圭司 演出:佐藤祐市)
2月4日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の挨拶』(創元推理文庫)所収「月の雫」

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《犯人》谷元雫 役

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片平なぎさ…主な出演:横溝正史シリーズII『女王蜂』(’78)、『探偵が早すぎる』(2018)、他に、いわゆる「2時間サスペンス・ドラマ」枠に多数の出演がある。

出演…清水綋治、近江谷太朗、佐藤誓、竹内寿、伊藤幸純、岩田丸、永井慎一ほか

《イントロダクション》

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 「8世紀唐代、中国史上最高の詩人と言われる李白は、酒と月をこよなく愛し、多くの詩を残した。孤独に飲む酒に、月と自分、そして、月に映る自分の影の三人がいると詠い、何ものにも縛られぬ自由を、李白は謳歌した。
 一説によると、長江に舟を浮かべ、酒に酔った李白は、水面に映る美しい月を取ろうとして、溺死したと言われている。」


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STORY
 昔ながらの製法を断固として護る、谷元酒造社長・谷元雫(片平なぎさ)は、谷元酒造を吸収合併しようと目論む佐藤酒造社長・佐藤一成(清水こう治)を、酒蔵でタンクに突き落として殺害。福家は、男性社会のなかで闘ってきた雫に共感さえ覚えるのだが…。

MEMO
 サスペンス・ドラマの女王と言われる片平なぎさ氏が犯人役を演じ、福家と対決するということで、放映当時、話題となったエピソード。
 日本酒蔵が舞台であり、『刑事コロンボ/別れのワイン』を否が応でも想起させる回だが、内容的には『同/祝砲の挽歌』へのオマージュであろう。
 福家が発見する、佐藤社長の車両の駐車場所の矛盾、電気のスイッチ…今回も、詰め手が多く飽きさせない。

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 そして、原作からの改変が最も大きい回でもある。それは、犯人役の性別の変更…「谷元吉郎」という男性から、「谷元雫」という女性への変更である。
 その理由として、以下の点が考えられる。
 このTVシリーズは、男性上位の組織機構の中で、女性として戦う、ヘレン・ミレン主演のミステリ・ドラマ・シリーズ『第一容疑者』(英)的設定を加味し、真実に迫るエキセントリックなまでの捜査と、ラストにおけるメグレ警視的人間力のギャップが不可解かつ魅力である。その彼女に対峙する、男性社会で闘ってきた「もう一人の福家」としての犯人役…という鏡像関係的な位置付けを、狙ったものであろう。
 その大きな傍証となるのは、ドラマ版での白眉とも言うべき、福家と谷元雫が一緒に酒を酌み交わし、語り合うシーン。「男性上位社会」の弊害のなかで暗闘する彼女たちが、その心情を吐露し、共感した(かに見える)対話は、結末の意外性をより増幅させる、装置でもあった。
 
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 谷元雫の「あなたのこと、友だちになれるかもしれないって思ってたのよ」 
 「あなたなら、わかってくれるはずよ」
 福家「私は…いち刑事です」
 「違う…あなたは女よ。あたしと同じ…そして、友だちなのよ、私たち…」

 ※福家の最後のひと言「私にとってあなたは…いち殺人犯です」

 原作において、福家と「月の雫」を酌み交わす男性犯人・谷元吉郎との心通う感慨深い雰囲気はそこには微塵も無く、その自らの「共感」すら、”罪”として断固として撥ね退け、雫を断罪する福家が痛ましい印象すら残す。
 女性犯人との戦いが強烈なインパクトを与える、本シリーズの特色を、如実に体現したエピソードであろう。

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【 第5話 】相
(脚本:麻倉圭司 演出:佐藤祐市)
2月11日(火祝)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の再訪』(創元推理文庫)所収「相棒」

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《犯人》立石浩二 役

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板尾創路…主な出演:『女マネージャー金子かおる 哀しみの事件簿1』(2002)、『空気人形』(2009)、『板尾創路の脱獄王』(2010、兼脚本・監督)、『家族ゲーム』(2013)、『大河ドラマ いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019)ほか

出演…笑福亭鶴光、福田転球、なだぎ武、オール阪神・巨人、真中乃亜ほか

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 「1888年、フランスの画家ポール・ゴーギャンは、当時、無名だったヴィンセント・ファン・ゴッホに熱望され、彼との共同生活を始めた。しかし、作風の異なる二人の天才は互いに相容れず、関係は悪化。ゴッホは精神を病み、自らの耳を切り落とした。
 一説では、ゴッホの耳を切り落としたのは、ゴーギャンであるとも言われている。」


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STORY
 ヴェテラン漫才コンビ、京阪のぼり・くだりの、くだりこと内海珠雄(ほんこん)が精彩を欠き、のぼりこと立石浩二(板尾創路)は解散を考えていた。しかし、内海は「半年待て」と主張し譲らない。立石は郊外の一軒家に内海を誘き出し、鍵がない為、塀から木に移り、ベランダに入ろうとした彼を突き落とす。石でとどめを刺そうとする立石に、内海は「捨てな」と言い、息を引き取った。…

MEMO
 一世を風靡したコンビの愛憎劇に、やはりエラリイ・クイーンやレヴィンソン&リンクという、共同作業で新しい時代を拓く作品群をクリエイトした、コンビ作家たちの悲喜交々を想起させ、且つ『刑事コロンボ/構想の死角』('71)へのオマージュを感じさせるエピソードである。
 原作で感銘した、犯人が取り違えた傘の手がかりが、ものの見事にカットされていて、少々、残念であった。
 本シリーズは、ラスト直前まで一気呵成に進み、展開が早すぎる印象がある。
 実質46分。
 時間的制限が同程度だった『古畑任三郎』も、恐らくは、同じ問題を抱えていたと思われる。解決直前の古畑の口上は、様々な伏線を整理し一点に集中させる利点があり、また、ドラマの流れをいったん堰き止め、「推理ゲーム」として収束させる効果があった。

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 終盤の証拠発見のシーンに関して言えば、あえて二岡がその場にいて、それを見つけることは打合せ済みだったのだろう。そこに、あるか無いかの賭けは、あの時点ではありえないと思うと、犯人への心理的圧力というより、「一時期、お笑いを目指していた」と語った二岡が、辛くともその場にいて、結末を見届ける為に同席したのではないか、と想像を膨らませてしまう。福家の後ろに佇む彼の、痛ましげな表情から、そう読み取れるのである。
 そして、ドラマ版オリジナルである、被害者・内海の最期のひと言の、真の意味が明かされるラストは、ミステリとしても、人間ドラマとしても、素晴らしい仕掛けであった。

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 ※福家の最後のひと言「内海さんは、天才だったわけではありません。あなたの相棒だったんです」

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【 第6話 】愛情のシナリオ
(脚本:正岡謙一郎/麻倉圭司 演出:岩田和行)
2月18日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の挨拶』(創元推理文庫)所収「愛情のシナリオ」

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《イントロダクション》

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 「1914年、劇団芸術座の舞台『復活』が上演され、ヒロインであるカチューシャ役を演じた松井須磨子は、一躍スターとなった。芸術座を率いる島村抱月との不倫、美しさを求めての美容整形。女優として烈しく生きる姿勢は、当局の検閲制度が厳しくなる中でも、変わることはなかった。
 数年後、須磨子は劇団の道具部屋で首を吊り、この世を去る。」


《犯人》小木野マリ 役

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若村麻由美…主な出演:『連続テレビ小説 はっさい先生』(’87-88)、『八つ墓村』(2004)、『科捜研の女』(2008~)、『私という名の変奏曲』(2015)、『アリー my Love』(‘97-2002 吹替 アリー・マクビール役)ほか

出演…黒沢あすか、高月彩良、山本圭祐、別当優作、福山翔大、上谷健一、花戸祐介、アラキマキヒコ、中村容子、田上唯、山中雄輔、愛純もえり、高岡裕貴ほか

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STORY
 女優の小木野マリ(若村麻由美)は、柿沼恵美(黒沢あすか)のマンションで、公演『東京ローズ』のプロデューサー二階堂との熱愛写真を見せられ、同公演のオーディションから降りろと迫られる。マリは、柿沼恵美に睡眠薬入りコーヒーを飲ませてベランダから地上に落とし、殺す。部屋のドアには鍵がかかっており、遺書と思われるメモもあり、自殺と推定されていたが、福家警部補は疑問を持つのであった。

MEMO
 被害者は女優、ベランダからの飛び降り自殺を偽装…という脚色は、『刑事コロンボ』の原作者、リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンクの傑作TVムーヴィー『殺しのリハーサル』を容易に連想させる。また密室の謎は、『ジェシカおばさんの事件簿』の一編(第1シーズン第10話 Death casts a spell )を想起させる。
 終盤、動機の解明に重点を置いた展開に、人間ドラマ的強度も俄然、高まる。
 福家警部補のキャラクターが少々、浪花節に振れすぎている危惧も感じたが、つまりはハードボイルド寄りの造形、ということでもある。

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 ※福家の最後のひと言「いつまでも、演じていてください」

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 前述の通り、TVシリーズ版・福家に関して、「真実に迫るエキセントリックなまでの捜査と、ラストにおけるメグレ警視的人間力のギャップが不可解かつ魅力」と感じていたが、第6話ではそれが彼女の過去に起因しているような描写があった。『家族ゲーム』では主人公の動機をドラマ独自に、今日的なものに設定しつつ、最終話ラスト数分でシリーズ全体をものの見事にひっくり返したスタッフだけに、期待したのだが、最終的に、彼女の過去を示唆するに留まった。
 「シリーズ構成に、少々破綻あり」と評する所以である。ただし、それはシリーズ自体が「決して閉じない」問いかけを封じ込めたということでもあり、尽きない謎を秘めた、「永遠の未完成」として、皮肉にも存在することとなったのである。

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【 第7話 】オッカムの剃刀・前編
【 第8話 】オッカムの剃刀・後編

(脚本:麻倉圭司 演出:岩田和行)
2月25日(火)、3月4日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の挨拶』(創元推理文庫)所収「オッカムの剃刀」

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《犯人》柳田嘉文 役

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古谷一行…主な出演:『新選組始末記』(’77)、横溝正史シリーズ(’77-78)、『87分署シリーズ・裸の街』(‘80)、金田一耕助シリーズ(’83-2005)、『相棒』(2009-2016)、『悪魔の手毬唄〜金田一耕助、ふたたび〜』(2019)、ほかに、火曜サスペンス劇場他で、松本清張原作作品への出演も多数。2022年8月、没。

出演…みのすけ、柳憂怜、ダイアモンド☆ユカイ、内田慈、林和義、渡辺尚彦、吉田玲菜、渡辺聖花、中西希、逢澤みちる、木地谷厚子ほか

《イントロダクション①第7話》

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 「2012年、イギリス中部、旧修道院跡から、15世紀のイングランド王、リチャード三世の白骨遺体が発見された。リチャード三世は、王位に就く為、他の候補者たちを暗殺した残虐な暴君であり、その容姿は醜悪であると伝えられている。
 しかし、白骨から復顔されたその顔立ちは、思いやりと気品に満ちたものであった。
 彼は本当に、悪人だったのか。」


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《イントロダクション②第8話》

 第8話は、これまでの「歴史上の人物や挿話で、その回の内容を示唆する」という原則を変更。
 「2014年2月、城北大学講師・池内国雄が何者かに殺害される。警察は、それまでに起きていた四件の連続強盗犯による犯行と断定。前科を持つ被疑者・今井圭三の行方を捜索。」
 …で始まる、前回のエピソードのダイジェストで幕を開ける。
 そして、前回のラストにて死体で発見された、連続強盗犯・今井を、柳田教授が神社の境内の階段から突き落とし、始末するプロセスを克明に描写。
 今井の潜伏先で福家は、石松警部から部外者と呼ばれ、「出ていきなさい」と宣告される。
 そして翌朝、平伏して謝罪する福家の決定的敗北と、傲岸にほくそ笑む柳田。
 
 二岡「福家さん、言わなくて良かったんですか。今井の死には、まだ不審な点があるって」
 福家「それもまた、ただの推論よ…悪いけど、池内さんの研究室から預かった資料、返却しといてくれる」
 二岡「えっ…だって、まだちゃんと調べてないじゃないですか」 
 福家「私にはもう…捜査権はない…。」
   「私には…何も、できない」


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STORY
 城北大学近郊で、連続強盗事件が発生するさ中、大学の講師、池内国雄(みのすけ)が街路で殺害される。それは、科捜研で「神様」と崇められる、城北法科学科特任教授の柳田嘉文(古谷一行)が、ある秘密の口封じの為、強盗の仕業に偽装して、行った犯行であった。
 柳田を疑い始める福家は、卓越した複顔技術によって、幾多の事件を解決してきた彼の圧倒的な権威に、その行く手を阻まれる。
 徒手空拳で挑む福家に、勝ち目はあるのか…!

MEMO
 過去にNHKで一度、映像化された、本シリーズの代名詞とも言える、ビッグ・ネームの登場である。しかも、金田一耕助を演じたことでも有名な古谷一行氏が犯人役とくれば、敵として、不足は無し。今回は、遺恨無しのタイトルマッチとして、前後編の2話構成と相成ったのであろう。
 古谷一行氏演じる、城北法科学科特任教授・柳田嘉文は、原作者の大倉崇裕氏曰く、コンバット・アーマーに例えればデザート・ガンナーとのことである。これは、砂漠戦用の、多脚型最強のコンバット・アーマー
 ブロックヘッド福家と、どう闘うか、鑑賞前から、胸が熱くなる一戦であった。
(意味不明な方は…以下、略。)

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 ダイアモンド☆ユカイ氏の登場が、単なるゲスト出演ではなく、解決に重要な役割を演じるのが素晴らしい。
 今回思ったのは、映像ミステリに於いて、全体の長さに対して、犯人が誰かに限らず、「真相」が明かされるのがどの瞬間か(残り何分か)が感覚的にひじょうに重要になっているということである。
 それも、多分『刑事コロンボ/二枚のドガの絵』('71)が基準かもしれない。
 NHK版『福家警部補の挨拶~オッカムの剃刀』では、『刑事コロンボ/逆転の構図』('74)を意識したのであろう、「今の目撃したね?」が存在し、原作と同じく、ドラマとしてもオマージュを捧げていたが、このフジテレビ版では採用しなかったのも、その独自性として好印象であった。
また、福家が捜査権を喪う展開は『同/権力の墓穴』('73)であり、また、過去の事件を最後に明かすのは、『同/偶像のレクイエム』('73)的な結末であろう。
 ドラマ的なオリジナル要素として、石松警部の矜持と、福家の(いつもの)断罪で幕を閉じる鮮やかな解決が嬉しい、好編である。

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 ※福家の最後のひと言「人は、理論通りには動きません。…例えそれが、神様の言うことでも」

 福家警部補が犯人を疑う秀逸なきっかけは、NHK版と同じく、採用されていなかった。拉致被害者を連想させるのでボツなのかと推測していたが、大倉氏はTwitterで、映像の場合、過去と現在の移動によって、判りにくくなるのがネックの為、カットされるのではないかと語られている。

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 今回、石松警部が勝手な捜査を進めることに激昂し、彼女に抗議する迫力は、さすが、映画『十三人の刺客』(2010)の松平斉韶役のクレイジーな演技が絶賛された、稲垣氏の独壇場であった。
 さて、余談ではあるが、福家と石松警部の関係性は、クルーゾー警部ドレフュス主任警部のそれに似てきたような感がある。そうなるとやはり行き着く先は『刑事コロンボ/権力の墓穴』で、標的は福家となるのではないか。
 稲垣氏、錯乱していく役はピッタリとハマると思うのだが、どうであろうか。
 もし自分が『福家警部補の挨拶』の原作を知らなかったら、恐らく「石松警部はアイドルなのに出番が少なすぎる…最終盤で、各話の犯人全員を催眠術で操っていたのは、実は石松だった!となるのではないか」などと、某ドラマ的妄想を、膨らませていたに違いない。
 でも、石松警部の出番をあそこまで抑えて、ミステリとしての構造や伏線を優先させる、強い意志と奥ゆかしさには心から感動するのである。

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 前回まで、ひたすらまくし立てる印象の福家が、今回尺に余裕があるせいもあってか、抑揚のある台詞まわしで、特に高音部が美しい。皆に怒られる彼女に、 仕方ない部分もありつつ、素直に応援したくなる展開であった。

 余談その2。今回、研究員の役で出演されている内田慈さん、『実験刑事トトリ2』でも事件関係者だった。両方出演されている俳優の方は他にもいるが、頗る印象的な方で、すでに、倒叙推理ドラマの事件周辺には必ずいる印象である。(笑)
 NHK・Eテレのファンとしては、オフロスキー(小林顕作さん)とデテコ(内田慈さん)がすでに出演されているので、これからサボさんやコッシーも出てほしかったが、これはさすがに我儘と言うものか。




【 第9話 】或るの出来事
(脚本:丸茂周/麻倉圭司 演出:佐藤祐市)
3月11日(火)21:00~21:54 放送

《犯人》木原幸信 役

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林遣都…主な出演:『バッテリー』(2007)、『コヨーテ、海へ』(2011)、『私をくいとめて』(2020)、『大河ドラマ いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019)ほか

出演…長谷川公彦、室井滋、きたろう、小久保寿人、井上康、辻川慶治、福田温子ほか

《イントロダクション》

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 「1969年、世界一有名な詐欺師と言われた男、フランク・アバグネイルが逮捕される。
 医者や弁護士、パイロットなど、様々な職業になりすました彼の人生は、ふたつのことを象徴している。
 ひとつは、どんな職業であれ、簡単になれるということ。
 もうひとつは、どんな職業であれ、簡単になってはいけない、ということ。」


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STORY
 聖南総合病院救命センターの、現在は使用されていない初療室で、木原幸信(林遣都)が外科部長・森本和弘(長谷川公彦)を撲殺。
 そこへ、看護士・丸山陽子(室井滋)と、大きなバッグを抱えた荒川勉(きたろう)が入ってきて、白いシーツで隠された、森本の死体を発見する。咄嗟に、木原は白衣を着て眼科の新任医・千条(せんじょう)と称して誤魔化すが、丸山も荒川も、森本と因縁があり、彼に会いに来たようだった。そんな3人のもとに、二岡の見舞いに来て、迷子になった福家が現れる!
 警察手帳も携帯もない彼女を、警察官と誰も信じず、木原は「妄想の刑事」と決めつける。
 この事態に、彼女はどう対応するのか…。

MEMO
 楽しい幕間的な、TVシリーズ独自の、オリジナル・エピソードである。
 舞台劇がルーツの『刑事コロンボ』の逆展開と言えようか。

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 倒叙というより、死体を巡るシチュエーション・コメディ的小品だが、内容的に重く、終盤戦で、福家に、さらなる試練が待ち受けるタイミングだけに、こんな息抜きの回があって良いと思うのである。
 外科部長・森本を殺した木原(林遣都)のもとに、看護士・丸山(室井滋)がいきなり現れて名前を問われた際、棚にあった「手指用洗浄液」を見て、咄嗟に「千条」と漢字も含めて(笑)咄嗟に答えるシーンなど、微苦笑を誘う。
 ドラマ版『福家警部補の挨拶』は、開巻で犯人に対して、過度に寄り添うことをせず、視聴者の感情移入を意図的に避ける傾向があり、特に「殺人の動機」に関して、伏せ札とするエピソードがひじょうに多い。今回は、原作抜きのオリジナルだけに、警察における石松警部の取り調べと同時進行して、不明だった犯行の動機が、徐々に明かされていく内容となっている。

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 三谷幸喜氏的な、演劇的な方向性を取り入れた、TVドラマとしては異色の設定であり、死体を巡って、荒川の素性と森本との関係、そして看護士・丸山の秘めたる愛情も明かされていく過程も鮮やか。
 そんな中、舞台で鍛えあげられているであろうメインの3人、まずは、壇れいさんのコメディ演技が楽しい。さらに室井滋さんは、『ビリイ・ザ・キッドの新しい夜明け』(’86)の頃を想起させる可愛さで場面を攫い、もはや重鎮、シティボーイズのきたろう氏(『古畑任三郎』「動く死体」が懐かしい!)も、挙動不審な壮年・荒川を楽し気に演じている。

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 犯人を追い詰める罠も綺麗に決まるが、これは本シリーズの宿命、ブラック・コメディの様相を呈した事件も、遂には「動機が崩壊する」暗澹たる結末に落ち着くのであった。
 石松警部の、福家警部補に対する、その過去への言及で、次回に続く。

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【 第10話 】少女の沈黙
(脚本:麻倉圭司 演出:岩田和行)
3月18日(火)21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の報告』(創元推理文庫)所収「少女の沈黙」

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《犯人》菅村巽 役

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岩城滉一…主な出演:『蘇る金狼』(’79)、『野獣死すべし』(’80)、『北の国から』(’81-2002)、『南へ走れ、海の道を!』(’86)、『ベレッタM92F 凶弾』(’90)ほか

出演…山路和弘、吉田里琴、デビッド伊東、米村亮太朗、古井榮一、金原泰成、棚橋逸香、小堀裕之、黒石高大、青木健、麻倉じゅん、福吉寿雄、織田浩、井出武、袴田健太、大山竜一、水野直、花ケ前浩一、井上顕、河合良紀ほか

《イントロダクション》

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 いよいよシリーズ終盤に向けて、ドラマ版福家警部補のパーソナリティの「核」となるべき、過去の事案が前面に押し出されてくる。今までの、壇れいさんから、このエピソードのみ、石松警部役の稲垣吾郎氏のナレーションとなっている。
 「2012年、警視庁捜査一課・強行班第13係に、ひとりの女性が配属される。
 もとはキャリア組として警察庁に入省した彼女は、交番勤務、生活安全課などを経て、公安部・外事第4課に異動。しかしその後は、昇任を拒否し、現在の課に配属された。
 外事課時代での7年間、彼女がどのような活動をし、経験をしたのか。
 その詳しい記録は、どこにも残されていない。」


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STORY
 菅村組三代目組長の元・四代目組長、菅村巽(岩城滉一)はある事件を機に組を解散し、現在は警備会社を立ち上げている。元若頭の遠藤次郎(デビット伊東)は、組の再興を迫る為、その長女・菅村比奈(吉田里琴)を誘拐。巽は、元組員・金沢肇(米村亮太朗)を利用して遠藤に会い、両者を仲間割れに偽装して、殺害する。凄惨な現場に物怖じしない福家は、担当を命じられるのであった。

MEMO
 私が原作の中で、最も偏愛する「少女の沈黙」

 正直、あのヴォリュームを40数分でやるのは難しいのであろう、設定も大きく変更され、ドラマならではの凝縮した物語に仕立ててあるとは言え、犯人の性別自体を変更した「月の雫」に次いで、このシリーズで、原作改変度が高いエピソードとなった。

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 犯人である「菅村巽」が、栗山組の元「若頭」から、元「組長」に変更されていて、必然的に誘拐された少女・比奈も「実の娘」という設定となり、その親子関係がドラマの主軸となった。ラストに於ける最大の「詰め手」すら、全く変えているのである。
その為、原作が湛える叙情性や、この作品の最大の魅力である主人公(と、言って良いと思う)「菅原」の、三代目組長との約束を護り通そうとする信念、元組員への愛情は雲散霧消してしまった。
 明らかに心的外傷を負い、自殺すら幾度も試みる少女・比奈に対して、ひたすらに訪問を繰り返し、証言を迫る福家警部補にも、(それが彼女の過去を示唆する、伏線込みだとは言え)少々、違和感を禁じ得ない。
 この、原作における犯人の存在の絶妙さは、元「ナンバー2」という参謀格、『ゴッド・ファーザー』('72)で言えばロバート・デュヴァル的な、寡黙だが「家族」の為には死も厭わない、まさに文字通りの「兄貴」的な側面にあったと思われるのだが…と、少々、残念な気持ちを抱かせる脚色であった。
 それでも、大ヴェテランである岩城滉一氏が、さすが役柄に合致した好演を見せる。

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 ※福家の最後のひと言「あなたは護ったのではなく、殺したんです。比奈さんの心を」

 そうは言っても、ひとつの完結した原作を、異なる価値観からスポットを当てて、新たな物語を紡ぐのが、脚色の面白さであり、原作が大好きな視聴者にとっても、その解釈の意外性を読み解くことが、これまた格別の楽しみとなり、それだけのポテンシャルがある原作の、映像化だとも思うのである。

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 『踊る大捜査線』('97~2012)『マークスの山』('95)あたりから、警察官を主人公にしたドラマ・映画における一般的な"リアリティ"の成立が、より難しくなってきている感もある。本庁ー所轄の関係や階級の厳密さ、捜査会議の描写など…その呪縛が映像化にはつきまとう。でも、それが異種格闘技的な面白さにもなる側面も、否定できない。
 この呪縛を解き放つために、極端なコメディ演出で、荒唐無稽な絵空事に傾く場合も多く、NHK版『福家警部補の挨拶』(2008)はまさにこのパターンであった。

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 フジテレビ版TVシリーズは、従来の倒叙推理の枠は堅持しつつ、ある程度の(ドラマ内)リアリティを獲得せんとする実験、敵中突破の様相を呈して、その間隙を縫うが如き、アンバランスさが新しいと、思われるのである。

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 尚、『笑っていいとも!』への、壇れいさんのテレホン・ショッキング出演がこの時期にあり、本作品が、いかに台詞が多いかの苦労を、タモリに訴える場面が放映されていた。

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【 最終話 】女神の微笑
(脚本:麻倉圭司 演出:佐藤祐市)
3月25日(火) 21:00~21:54 放送
原作:『福家警部補の報告』(創元推理文庫)所収「女神の微笑」

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《犯人》後藤喜子 役

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八千草薫…主な出演:『プーサン』(’53)、『ガス人間第一号』(’60)、『田園に死す』(’74)、『岸辺のアルバム』(’77)、『阿修羅のごとく』(’79)、『ちょっとマイウェイ』(’79)、『アガサ・クリスティーの名探偵ポワロとマープル』(2004-2005、吹替 ミス・マープル役)ほか。2019年10月、没。

出演…山本學、阿部亮平、山根和馬、白洲迅、松本実、Kiyoka、小泉千秋、金井淳郎、櫻井尚子ほか

《イントロダクション》

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 「1947年、警察法が改正され、現在の警察庁が設置される。
 この組織に属する警察官は、皆、以下のような宣誓を行う。
 『私は 何ものにもとらわれず
  何ものをも恐れず
  何ものをも憎まず
  良心のみに従って
  公正に警察職務の
  遂行にあたることを
  厳粛に誓います』と。」


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STORY
 車椅子の後藤喜子(八千草薫)と後藤秀治(山本學)は、宝石店強盗殺人の犯人グループの一人、網山聡(松本実)のバッグを爆弾にすり替え、全員が爆死する。現場に駆けつけた福家は、喜子と偶然にも出会い、疑いを持ち始める。福家の訪問に焦燥する秀治と、嬉し気な喜子。
 凶悪犯に鉄槌を下す、最強の殺人犯・喜子を、福家は止めることが出来るのか。…

MEMO
 最終回、ゲストは八千草薫さん。
 夫の役が、土屋嘉男さんであったなら…と今でも思うが、『特捜最前線』的な目線で言えば、山本學氏も納得がいくというものである。
 キャスティングで言えば、壇れいさんと、八千草薫さんは、新旧宝塚対決という側面もあり、演劇史的にも、猶更に興奮必至の絶妙さである。
 原作は、私にとって「少女の沈黙」と並んで最愛のエピソードであり、期待も並外れたものであったが、有終の美として、見事に応えてくれた回である。

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 ドラマとしての特色、女性対女性の対決に於ける、凄まじい独特のニュアンスと、その異様な迫力が、本エピソードでまさに、臨界点に達した印象がある。そういった意味では、最終話が世代的な差をも含んだ凄まじい闘いとなったことが喜ばしい。
 原作では生き永らえる犯人・後藤喜子を、爆死させる独自の脚色はドラマ的、最終回的な必然でもあったと理解できる。

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 原作者の大倉氏によれば、小説の中の後藤喜子はいまも、悪人を成敗し続けており、何話か先で福家と2度目の対決をする予定とのことであり、僕も、復活を今も強く待ち望む一人である。

 TVシリーズとしても、総合的にベスト・エピソードと言って良い傑作であろう。

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 一貫して、『刑事コロンボ/別れのワイン』(’74)的な殺人者への共感、同期を否定し続けたドラマ・シリーズのラストで、福家は不覚にもその「禁」を冒したことで、当然の如く、その報いを受けざるを得なくなる。

 私の総括として、このドラマ・シリーズは、「汝、殺すなかれ」の戒律を、「侵す者」「侵さざる者」との、執拗な闘いを描く、ある種宗教的な論争劇であったと理解したのである。
 その意味で、苦悩し続ける福家は殉教者であり、安易な休息などないことは必然なのだ。好みは別としても、その一貫した、誠実なる作品作りに、敬意を表したい。

 最終回、ラストカットの後に「私だけの十字架」が脳内で流れ続けていた。
 シリーズ的にも、最も『特捜最前線』に、近づいたエピソードでもあったように思える。

 ※福家の最後のひと言「「はい。…わかりました」
 (石松「…これからも頑張ってください。福家警部補」の言葉に対して)






【 『福家』ャラリー 】

「笑っていいとも!」 (2014年2月24日(月)放送)
 テレホン・ショッキング ゲスト:檀れい

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「SMAP×SMAP」( 2014年3月3日(月)放送)
 BISTRO SMAPのゲスト:檀れい、柄本時生

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第21回がんばった大賞 ドラマNG大放出SP(2014年3月24日(月)放送)

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最終回 直前CM(約4分)

 「倒叙ミステリー」の定義から始まって、『刑事コロンボ』『古畑任三郎』の映像も交え、その系譜に連なり、かつ新しい要素として、「女性(ヒロイン)」の探偵役であることを強調。最終回を迎えようとするシリーズを、盛り上げる内容となっている。

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◎連続ドラマ化時の、文庫帯

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◎福家警部補の挨拶 クリアファイル A4サイズ 350円(税抜)

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《 表面 》

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《 裏面 》

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【 オリジナル・ウンド・トラック 】

フジテレビ系ドラマ『福家警部補の挨拶 オリジナル・サウンドトラック 』
音楽:横山 克 PCCR-00588 ポニーキャニオン(2014年2月26日 発売)

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【 ドラマ版・福家警部補の「過去」について 】

 これまで縷々記してきた通り、ドラマ版『福家警部補の挨拶』では、執拗に単独捜査を続ける主人公の「動機付け」として、福家の過去について、原作にはないオリジナル設定を導入している。
 それは、シリーズを通してエンディング・ロールの背景に現れる、無数のポラロイド・カメラ写真として、提示されていた。その写真には、中東地域と思われる風景に、戦車、兵士等が映っており、これは、誠に慎ましやかな「伏線」と言って良いであろう。

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 そして、その「過去」は、シリーズ後半に、犯人による福家の内面への洞察や、石松警部による内偵、また彼女への指摘として描かれる。
 

第6話『愛情のシナリオ』

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 小木野マリ「あなたは本気で止めようとした。本気でね。命がけの気迫のようなものを感じたわ。傍観している周囲への怒りも含めて。…あなた、過去に何かあったでしょ?普段は喜怒哀楽も知らないような喋り方してるけど、あなたには、強くて烈しい感情があるのよ。…そして、そのどちらも、本当のあなたでしょ?」


第9話『或る夜の出来事』

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 石松「福家君。君の経歴を調べました。2005年から7年間、公安部外事第4課で、イラン、イラク、シリア、エジプト、コソボに赴任。…キャリアとしては、エリート・コース。しかし、2年前に自ら希望を出し、捜査一課にやって来た。なぜ君は、ここにいるんです。
 捜査一課で、何をしようとしてるんです」



第10話『少女の沈黙』
 石松(二岡に)「彼女は、キャリア組として、エリートの道を着実に進んできた。しかし、外事課での活動の後、自ら昇任を断り、この捜査一課にやって来た。どういうつもりか、前に本人に尋ねたところ、答えをはぐらかされましてね。」

 …また、父親の殺人を前にして心を閉ざした少女・比奈と対するうち、福家が過去、恐らくは中東地域に赴任していた際、撮影したであろうポラロイド・カメラによる写真をロッカー・ルームから取り出し、見つめる描写がある。
 また、扉を閉め忘れたそのロッカーから、その写真を石松が発見する件もあり、彼が彼女の過去に徐々に近づくさまが描かれている。

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第11話『女神の微笑』

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 福家「何故です。どうして私を昇任させたいのですか」
 石松「警察と言う組織を変える必要があるからです。何かを変える為には、上に立つ必要があるんです」
 福家「私には、そんな資格はありません。答えられなかったんです。
 絶望的な憎しみに捉われた人の問いに。…私は、警察官として失格なんです」

 石松「君は過去に、幾つもの地獄を見てきたんでしょう?
 だからこそ、できることがある。やるべきことがある。…違いますか」


(犯人の死に遭遇した後、病室で)
 石松「前に言った、君の昇任の件ですが、僕の方から断っておきました。
 目指すものは同じでも、君には君自身の道がある。そうですよね。
 …これからも頑張ってください。福家警部補」

 福家「はい。…わかりました」

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 …驚くべきことに、終盤において石松警部が迫ってゆく、「(中東地域で)福家に何があり、何が彼女を変えたのか」という、構成の流れ的には、間違いなくその「核」となる背景は、ついに描かれずに、シリーズは幕を下ろしてしまったのである。
 ここに綴られた台詞の断片から推測すれば、

 「福家警部補は、過去に公安部外事第4課(国際テロ関係、特に中東地域のスパイに関する捜査)に所属し、中東地域に赴任していた際、地獄を見た。(ポラロイド・カメラの写真から察するに)爆破テロ等にも遭遇し、少年少女を始め、多くの死に直面したと思われる。
 その悔恨と「人を殺す」ことへの憎悪、そして「大量殺人ではなく、たった一人を殺した人間との関わり」を求めて、日本に帰還した後、捜査一課に属して単独捜査に日々、勤しんでいる。」


 …と、想像されるのである。

 それに対して、石松はある種の共感を覚えたのか、昇任を勧め、いわば同志として警察組織の改革に協力してほしい、と一度は考えるものの、組織云々というよりは、「一人の死」により深く関わる苦行を以てしか救われない「闇」を抱えた彼女に、そのままのスタンスをあえて許し、生き延びる途を残した…と捉えられるような、幕引きであった。



【 スペシャル企画 】

『福家警部補の挨拶』

 ~原作者・大倉崇裕氏に、
    ここが聞きたい!Q & A~


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び 】

 最初に指摘しておきたいこととして、TVシリーズ『福家警部補の挨拶』は、どうしても「倒叙ミステリ」の先達たちと比べられ、観る側がハードル上げすぎてしまう傾向もあったことは、気の毒であった。
 毎回が、伝統芸能の由緒ある一門の襲名披露公演のようでもあり、製作する側の苦労は並大抵ではなかったであろう。かく言う私も、「観るだけ」であるにも関わらず、何故か何かと勝負するかのような緊迫感が漂ってしまっていた。

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 最終回、(ドラマ版における)彼女の過去について答えを出さなかったのは、前述の通り、シリーズにおける欠点でもあり、結果的に「永遠の謎」を残したという、魅力でもある。
 僕の場合は、最終話を観る前から、福家の過去に対するイメージが勝手に膨らみ過ぎ、変身ヒーローが「何故、悪の秘密結社から改造人間にされたか」的悲愴感やら、手塚治虫『アラバスター』的やり切れなさを感じていたのであるが…。(笑)

 最後に、小説『福家警部補』シリーズが生まれ、それがTVシリーズになったことが嬉しい。
 唯一無二とさえ思われた『刑事コロンボ』から派生する、倒叙推理ドラマの新たな可能性について、改めて目を開かせてくれた。このシリーズは、主に『刑事コロンボ』『古畑任三郎』という、過去への「倒叙推理」映像ミステリへの優れた批評であり、更新でもあったのである。

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 現在の日本に於ける『刑事コロンボ』周辺の活況や、新たな世代への魅力の浸透は『刑事コロンボ読本』以降の、町田暁雄氏、大倉崇裕氏はもちろん、優れたファンの方々の活躍あればこそ、であると思う。
 しかも、それが同作品の魅力を発見し、流布させていった石上三登志氏から、連綿と受け継がれゆく「流れ」があるとするならば、それは稀有なことであると、感動を禁じ得ない。 
 仏教に曰く、「法自ずから弘まらず」で、貴い教えを称え弘め続ける人々も、同じく貴いと故事にある通りである。
 現在も、『刑事コロンボ』に関する書籍が常に出版され、TVで放映される状況は決して当たり前ではないと実感する。
 そして、そこから派生し、発展を続ける大河の一滴として、本作品も今後、その輝きと評価を増していくことを、期待する者である。

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 なお、原作では、取り巻く市井の人々のドラマも、そこだけを独立して読んだとしても短編小説的な旨味が更に味わいを増しており、これからの展開を、より一層の楽しみとして、首を長くして待ちたいと思う。

 『福家警部補』シリーズで、いつか犯人役を「世界的に有名な、『刑事コロンボ』マニア」に設定してほしい。これは最強の敵ではないか。
 大倉氏&町田氏、何卒、よろしくお願い致します。(笑)

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 ―そして、大人の事情はよく判らないのですが、この作品を後世に残す為にも、本作品の公式なソフト化を切に希望したい、と添えて、この稿を終えたい。

 それでは、また。





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参考文献:『刑事コロンボ読本』(洋泉社)
     「福家警部補シリーズ対談 大倉崇裕&町田暁雄」



この記事へのコメント

  • せぷてい

    コメント失礼いたします。
    ≫本作品の公式なソフト化を切に希望したい
    ドラマを観ることができないので本当に何卒お願いします! 是非ぜひ再放送もしてほしいです。

    小説版とは違い、キャラクターや構成にも変化のある箇所があるんですね。『月の雫』の女性犯人への変更理由の考察MEMOは「なるほど」と感じました。

    『プロジェクト・ブルー』は好きなエピソードです。愛の深さゆえの結末。クリエイターの心理やオタク心には共感をしてしまいます。ドラマではフィギュアの造形はどのようになっていたのか気になります!

    2021年12月31日 00:23
  • めとろん

    「倒叙推理ドラマの帝王」、せぷてい様、いらっしゃいませ!
    訪問、嬉しいです。
    そう、公式ソフト化をぜひ、なのです。『プロジェクト・ブルー』のフィギュアは、素晴らしくカッコいいデザインでした。
    また、ぜひいらしてくださいね。お待ちしています!


    >せぷていさん
    >
    >コメント失礼いたします。
    >≫本作品の公式なソフト化を切に希望したい
    >ドラマを観ることができないので本当に何卒お願いします! 是非ぜひ再放送もしてほしいです。
    >
    >小説版とは違い、キャラクターや構成にも変化のある箇所があるんですね。『月の雫』の女性犯人への変更理由の考察MEMOは「なるほど」と感じました。
    >
    >『プロジェクト・ブルー』は好きなエピソードです。愛の深さゆえの結末。クリエイターの心理やオタク心には共感をしてしまいます。ドラマではフィギュアの造形はどのようになっていたのか気になります!
    >
    >
    2021年12月31日 09:02