『横溝正史研究』 2
特集 ビジュアライズ横溝正史ミステリー

皆様こんにちは、めとろんです。
昨年春、創刊された研究誌『横溝正史研究』、待望の第2号が、戎光祥出版から(やっと)出版され、小生も遅ればせながら手に入れました。
◇今回は、序文「刊行に寄せて」を、新本格の雄・有栖川有栖氏が。
巻頭インタビューとして、昭和32年製作の伝説の TVドラマ『月曜日の秘密』に脚本で参加された有高扶桑氏による、貴重な当時の背景。芦部拓氏、千街昌之氏をはじめとした、多彩な論考。正直、映画版一つひとつに関して、ここまで詳細な考察が展開されると、この『めとLOG』が採りあげる余地がなくなってしまう(笑)危機感を感じました。
個人的には特に、高倉健版と石坂浩二版を比較考察する、山口直孝氏の『探偵映画のモードとアポリア』と、もちろん小山正氏の『横溝正史TV化映像秘史』が読み応えがありました。とにかく、資料の少ない片岡千恵蔵主演のシリーズ等、石坂金田一以前の映画群への言及が多く、ポスターの採録もまた嬉しい。
また、『横溝正史年譜事典』は前回に引き続き、資料的価値十分の労作です。
◆編者は二松學舎大学文学部の江藤茂博氏、山口直孝氏、そして探偵小説研究家・浜田知明氏。
旧蔵資料公開として「横溝正史書き入れ『蝶々殺人事件』・『蝶々失踪事件』シナリオ」は大変興味深い。
ただし、創刊の際に掲げられた「二松學舎大学に収蔵された横溝正史旧蔵資料を題材に、同大学文学部・図書館・外部の研究者たちが集いあい、雑誌公開の形で継続的に研究を行う」といったコンセプトからすれば、その比重は申し訳程度にしか感じられないというのが正直なところ。
「横溝正史の映像化作品についての論考のみでまるまる一冊」という野心的試みには敬意を表したいものの、我々がこの研究誌(しかもその2冊目)に期待する内容とは、残念ながら、若干のズレがあるような気がします。
まあ、いつまで研究の継続が可能か、予断を許さない出版界の厳しい情勢等、現実的要請もあって、話題性のあるテーマを初っ端に持ってきたのでは…などと、いらぬ心配をしてしまうのでした。
その辺りに多少の疑問は残るものの、このテーマで350ページ以上のボリューム、その情報量(もちろん質も)は圧倒的!
横溝正史原作の映像作品に興味がある方には、諸手を挙げておススメしたい。
次号は、『倉敷・岡山殺人事件』の特集ということで、更なるディープな論考を期待しております。
【関連する記事】
- めとLOG ミステリー映画の世界 横溝正史/日本探偵小説 INDEX
- オイディプス王の憂鬱 ~スーパープレミアム 『悪魔が来りて笛を吹く』(2018..
- 「善悪の彼岸」の彼方へ 多羅尾伴内と金田一耕助 ~スーパープレミアム『獄門島』(..
- (改訂版)思いつき「悪魔の手毬唄」考 「書かでもの記」より
- 悪魔の手毬唄('61)高倉健主演!労働争議と、前時代的ヒーロー
- 思いつき『獄門島』考 補遺 市川崑監督『娘道成寺』('45)
- 気まぐれ日記 ミステリー文学資料館へ赴く。 トーク&ディスカッション「『新青年』..
- 祝・発刊!『横溝正史研究』創刊号
- 悪魔の手毬唄 ~年末にTVドラマを観たこと、つれづれ諸々に思うこと。~
- 祝・復刊!『横溝正史読本』小林信彦・編 歴史的名対談!
ひとつひとつは楽しめますし、資料価値は高いと思うのですが、二巻目にして早くも原典を離れ、ファンブックのような特集にするのは私もいかがなものかと思いました(苦笑)。なんせ、もっとアカデミックなアプローチのシリーズだと思ってましたから(笑)。
とはいえ確かに、正史をもってしても、この手の本で採算を合わせるのは厳しいんでしょうね。関係者の方々にはぜひ頑張って続けてもらいたいものです。
第2号発刊はとある掲示板(2ちゃんねるではない)で知りました。私にとってなかなか手の出せる値段ではないのが厳しいですが…。
『月曜日の秘密』に言及されているのは興味深いですね。『the Complete』や別冊宝島で初めて存在を知ったテレビ初の金田一シリーズ、いつの日か映像自体も観てみたいです。
今回は原作に関する論考はないのでしょうか?それはちょっと寂しいですね。
寂しいといえば、ここのところ金田一物の映像作品が(制作の噂とか)全くの音沙汰無しなのが残念です。
それはともかく、この研究本が更に続く事を私も願います。
そうですね、でも巻末の編集後記を読むと、昨年行われた倉敷市のイベントで、編者の江藤氏、山口氏は金田一耕助のコスプレまでされたそうですので(笑)、思ったよりそういったノリなのかもしれませんね。
楽しみながらも、さらに実のある研究を期待したいです。
価格は高いですよね…僕も辛いです。(笑)
『月曜日の秘密』、観てみたいです。あと、田村正和出演の『八つ墓村』も。
映像化に関しては、もっともっと面白い短編や中編もたくさんあるのですから、若いスタッフによる新たな解釈、挑戦を期待したいですね。
コメント、ありがとうございました!