トーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」

皆様、こんばんは。
めとろんです。
ずいぶん長い間、ご無沙汰しております。
担当していたプロジェクトも一段落し、更新もままならない超多忙な日々から、徐々に脱しつつある今日この頃です。
ひたすら精神的なリハビリに励む毎日から、いよいよ更新を再開して参りたいと思います。ゆっくりなペースではありますが、これからもよろしくお願い致します。
さて、本日は東京都は豊島区、池袋に鎮座まします《財団法人 光文シエラザード文化財団 ミステリー文学資料館》へ行ってきました。
開館10周年を記念して開催されている、トーク&ディスカッション「『新青年』の作家たち」に参加するためです。
本日はその2回目、テーマは『横溝正史』。
講師は探偵小説研究家、現在「横溝正史研究」の共同編集に携っていらっしゃる浜田知明氏。僕にはEQFC(Ellery Queen Fan Club)や『新版・横溝正史の世界』(創元推理倶楽部秋田分科会・編)で、(誌面の上では)お馴染みの方でした。
そして、資料館の館長は憧れの権田萬治氏!ひと目見て「これはぜひ参加したい!」と思ったのでした。
最初に同資料館のHPを見ると「先着35名」、これは急げと応募して当選したまでは良かったのですが、後からよく読むと、「講師のお話の後、フロアの方々から、質問や意見を出していただき、自由にお話いただきたいと考えております。」との一文が…。この手の講座やディスカッションなど、ついぞ参加したこと皆無の僕は、かなり緊張して池袋へ向かいました。ひと言で言いまして、「ビビって」(笑)いたわけです。
資料館の地下、少々狭い空間に楕円形の大きなテーブル。そして後方には椅子が20ほど。
そこで、浜田氏によって約1時間の講義が行われました。内容は、今回のシリーズのテーマに沿って、戦前の雑誌「新青年」に投稿していた時期の正史から、編集長時代を経て、作家として一本立ちしようとした時期へと、同誌と正史の関わりを、貴重な資料を通して鮮やかに語っていただきました。
特に、同誌への投稿に対する森下雨村編集長の選評を一つひとつ検証し、大正10年12月号の「一個のナイフ」以後、正史が投稿をやめ、寄稿家へと変化していった理由を特定していく過程は興味深いものでした。

その後、加えてディスカッションが行われましたが、参加者から活発な質問が飛び、あっと云う間の1時間でした。

僕も拙いながら、正史の作風の転換期についての質問をさせていただきました。
それは「なぜ、正史が戦後標榜したのは『本格』だったのか?」ということなのですが、浜田氏の答え:
「正史の本質は(意外と数も少ない)中期の耽美浪漫にはなく、デビュー当時のトリッキーな諸作品にあると思われる」
「それが、(クイーンのような)警察の捜査活動を正確に描くことに不得手な正史がディクスン・カーの作品に出会ったことで、書けるという自信を得た」
「つまり、もともと正史の本質はトリッキーな本格にあったのだ」
…との明快な論調に、納得して何度も頷く。こんな田舎者の質問に、誠実に丁寧に答えていただき、ありがとうございました!

浜田氏、そして権田氏ともに物腰も柔らかく、まさにジェントルマンでありました。
終了後、資料館の蔵書の中から「宝石」の『悪魔が来りて笛を吹く』と『悪魔の手毬唄』の連載第1回を手に取り眺め、満足して帰途に着きました。
それでは、また。
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知りませんでした!
今は立教大学の中になってしまったようですが
旧江戸川乱歩邸も池袋にあるのですよね。
ミステリーに縁が深い場所なんでしょうか。
横溝正史作品は中学1年生くらいのときにたくさん読みました。
でも、それ以来読んでないかも。
これからの季節はミステリーに似合いますね。
久しぶりに読んでみようかな。
そうですね、何かとミステリーと関係が深いですね、池袋。
旧乱歩邸も公開されるようになって、楽しみですね!
資料館の会員も登録してきたので、記事執筆の資料にもぜひ活用していきたいと思います!
秋の夜長、ぜひぜひ、横溝正史の世界に浸っていただきたいと思います。また、いらして下さいね!
私も、ミステリー専門の展示施設があるとは知りませんでした。いつか行ってみたいと思います。
最近心に少し余裕ができて、横溝先生の短編をいくつか読みなおしています(『読本』の方は、何とか半分まで読み終えました)。やはり横溝先生は、根っからの「探偵小説の鬼」なのですね。
もうすぐ冬ですが、あの研究本の第二号は未だ出ていないのでしょうか?金田一シリーズのドラマ新作の話も聞こえてこず、寂しい限りです。それでは、また。
ぜひぜひ、行ってみて下さい。古い『宝石』などたくさん所蔵されていて、連載当時の横溝作品が閲覧できて楽しいです。
第二号はどうなったのでしょうね。折しもこの大不況、研究が継続されれば良いのですけれどね。
新たな横溝作品の誕生を、また期待したいですね!