『横溝正史研究』創刊号

皆様こんにちは、めとろんです。
この度、横溝正史先生に関する本格的な研究誌『横溝正史研究』が、戎光祥出版から創刊されました!
◇二松學舎大学に収蔵された横溝正史旧蔵資料を題材に、同大学文学部・図書館・外部の研究者たちが集いあい、雑誌公開の形で継続的に研究を行うとのことで、まずはめでたい!…と、新たな横溝批評の地平が拓かれる舞台の誕生を、いちファンとして喜びたいと思います。
編者は二松學舎大学文学部の江藤茂博氏、山口直孝氏、そして探偵小説研究家・浜田知明氏。
創刊号は「特集 金田一耕助登場」、御子息・横溝亮一氏の「『横溝正史研究』創刊に寄せて」との巻頭文には『将来この研究が「推理文学国際センター」のような研究所に発展したら…と夢見ている』との壮大な構想と、熱い期待が寄せられています。
◆まあ、とにかく学術的な研究誌であるからして、そのコアな内容は、読破するにはよほどのファンでなければ辛い部分もあるかも知れません。(笑)
巻頭文に続く、浜田知明氏による『金田一耕助の変遷』は名探偵・金田一耕助のキャラクターが登場から第二次世界大戦従軍を経て、戦後どのように変容していくかを詳細に考察したもので、大変面白かったです。
そうなんですね、戦後の『本陣』『犬神家』などの名作群での彼と、その後の『幽霊男』『悪魔の寵児』等の煽情的な通俗的作品での彼には、若干ギャップを感じていましたので、この一文を読ませて頂き、ハタと膝を打った次第です。
◇その他、さまざまな論者が、「恋愛」「食生活」「金銭感覚」「パトロン」「語り手」「探偵方法」等…と、バラエティに富んだ論考を披露されています。
また一つの目玉としては、映画・ドラマで長年にわたり金田一耕助を演じてこられた俳優・古谷一行氏へのインタビュー『金田一耕助は、「風」』でしょう。
金田一役をオファーされた経緯から、役作りをめぐる苦心、'77年『横溝正史シリーズ』を担当した工藤栄一監督等とのやり取りや「逆立ち」シーン誕生のきっかけ、映画『金田一耕助の冒険』についてなど、ここまで詳細なインタビューは初めてではないでしょうか。まさにファン待望といって宜しいかと思います。
旧蔵資料公開として「『悪霊島』取材ノート」も素晴らしい。ただ、読み物として面白いかというと、資料的価値は別として、そんなでもない。(笑)…というのが本音でしょうか。
でも、『横溝正史年譜事典』は「書かでもの記」を改めて検証したさすがの充実度で、読み応えも充分。
第2号は本年初秋発刊予定で、『ビジュアライズ横溝正史ミステリー』と題し、いよいよ映像化作品について特集されるようです。この大不況の折、この研究が長期的に継続され、更なる深化を遂げられるよう、切に願っております。
と、いうわけで皆様おススメです!
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実は学術論文みたいなものばかりだったらどうしようと戦々兢々としていたのですが、めとろんさんの記事で、意外にとっつきやすそうな内容もあることがわかり一安心。とにかく到着が楽しみです。
ネットで直接、戎光祥出版に注文したのです。ちょっとしたトラブルもあったのですが、丁寧に対応していただいて感動しました。
こういった本を出版し続けるのも大変だとは思いますが、ぜひ継続していっていただきたいと切に願っております。
投稿を募集されているようですので、sugata様、ぜひ!
この雑誌が出た事は、2ちゃんねるの横溝正史スレッドで知りました。都心等のジュンク堂なる書店には置いてあるようですが、近所の書店ではなかなか見当たらないのが残念です。
そういえばこれ、いくらなのでしょうか?
今後は横溝先生の他のキャラ(由利先生とか)の研究発表もあると思いますので、それが楽しみです。
2400円+税でしたね。大変厳しい出費です。(笑)
やはりこの値段に見合ったクオリティを目指して頂きたいと思います。
由利先生の特集も期待したいですね。これからが楽しみです。
…さすがに、気軽には手が出せない金額です。とりあえず最初は定額給付金待ちと云う事で(笑)。
何はともあれ、金田一耕助ファン・横溝正史ファンにとって嬉しいニュースである事に間違いは無いですね。
次号の映像化作品の特集が気になります。次は秋かぁ…。
それでは、また。